■研修日時 平成28年4月9日(土)
■研修場所 福岡県中小企業振興センター
■研修テーマ
『神経難病の意志決定支援』
・一般演題 8組
・特別演題「人生の最終段階の医療とケア -意思決定支援と考える-」
東京大学大学院 死生学・応用倫理センター:会田 薫子先生
■研修所見
今回の講演は神経難病、特にALSを中心とした症例の紹介が多数あり、人工呼吸器の装着や胃瘻の増設といった本人・家族の希望をどのように汲み取っていくかということに焦点があてられた講演でした。特に人工呼吸器ではマルコも数多くのALS患者様と接する機会があります。本人が人工呼吸器の装着を拒否されたにも関わらず家族の希望で装着となった場合や、緊急手術を行いそのまま人工呼吸器を装着したというケースもあるとのことでした。マルコが関わる部分としては人工呼吸器の装着が決定した後となりますが、それまでに人工呼吸器の管理を考えている医療機関へ人工呼吸治療の目的や器械の説明を行います。治療の方針を決定する際に医療機関側が正しい知識をもって治療の選択肢を提供すれば、意思決定はあくまで本人・家族の意志を尊重するのだとしても、その決定の手助けに繋がるのではないかと思います。
また特別講演では、ALSにおける人工呼吸器の現状といったお話がありました。現在ALS患者様の呼吸器装着は3割で、その中には急変時、家族希望による本人が望まない装着も多々あるとのことです。特に人工呼吸器の装着有無に関しては、最終段階での意思決定がうまくいっていないケースが多いとのことでした。しかし患者のQOLを考えた際、QOLとは身体的苦痛や体の自立度だけで量るものではなく、心の自律度も重要となってくるとのお話がありました。この心の自律度には、生活環境や社会環境、本人の価値観のみでなく、医療を介して携わる人たちとの人間関係も重要となってくるとのことです。私たちが器械のレンタル業者として患者様宅を訪問する際に意識しなければならないことは、特にこの心の自律を支えるという部分であると考えます。これはALSと診断され呼吸器をご使用の患者様だけではなく、HOTの患者様にも共通することだと思いますが、呼吸苦からネガティブな発言をされる方も多くいらっしゃいます。そのような場合、悪いことでも否定をせずしっかり話を聴き、他人事として捉えるのではなく良いことも悪いことも共有・共感するということが大事なのではないかと思います。「医師は疾患を診る。患者は病を経験する。」という言葉の紹介がありましたが、同じ疾患であっても進行度の違いだけでなく、1人1人症状の出方や感じ方は違います。これからも、1人1人とのコミュニケーションを大事にしながら仕事に取り組むことが出来ればと、改めて感じました。
貴重な講演をしていただき有難うございました。
久留米 木村敬幸 |