呼吸リハビリテーションの目的運動療法パニック時の呼吸方法上手な痰の出し方
<医療法人天神会グループ新古賀病院リハビリテーション部 監修>
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私たち人間の体は、使わなければだんだん衰え、弱くなってしまいます。息切れがあると、体を動かす事(活動)が減ってしまい、 足腰が弱くなり、最悪の場合には寝たきりの状態になってしまうという悪循環が生じてしまいます。 そのために適度な運動を行う事が大切となってきます。
呼吸リハビリテーションには、運動により、息切れ(呼吸困難感)を軽減させ、運動耐久性の向上、活動範囲を拡大させる目的があります。
呼吸に必要な筋肉(呼吸筋)をストレッチしたり、トレーニングする事で、息切れを軽減し、呼吸がしやすくなるように考えられた体操をいくつかご紹介します。ある程度体に負担を与えなければ運動療法になりませんが、いきなり強度の運動を始めてはいけません。負担になり過ぎない範囲での適切な運動を続ける事が大切です。
注意点を守り、無理のない範囲で行いましょう。
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歩く事は安全で効果的な運動です。心臓や横隔膜等体の中の筋肉や足腰など体中の多くの筋肉も鍛える事ができ、運動に対する疲労感・息切れを軽減させる等の利点があります。

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横隔膜を使う呼吸により、呼吸に不必要な過度な運動を減らせ、より効率の良い呼吸ができます。 呼吸筋のリラクゼーション、肺のガス交換の増加や、肺の膨らみを助ける効果があります。

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慢性呼吸器疾患の方は、息を吐き出す時に、空気の通り道である気道がふさがりやすく、 しっかり息を吐き出さなければ、息をしっかり吸い込めない状態になります。 口すぼめ呼吸は、気道を広げる作用があり、気道の閉塞が改善し、息が吐きやすくなります。 さらに、肺胞を膨らませておく作用もあり、効果的な呼吸が出来るようになります。

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慢性呼吸器疾患の方は、胸郭の動きが制限されている事が多いです。 これは呼吸運動に消費されるエネルギーの増大を引き起こし、息切れを増加させる原因となります。 呼吸筋をストレッチする事で、柔軟性が高まり、胸郭が広がりやすくなり、また、 呼吸に対する過度の運動を抑制し、呼吸がしやすくなります。

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筋肉を鍛える事で、運動に対する筋および筋持久力の維持・向上ができ、疲労感・息切れを軽減できます。

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運動時の注意点
運動を行う時は無理をせず、自分のペースで練習しましょう。 目安は『うっすらと汗をかき、息切れがなく、会話しながら運動が続けられる程度(修正ボルグスケールでいうと4~5程度)』(詳しくは下の表を参照)
酸素療法をされている方は流量を体動時の流量で行いましょう。
呼吸困難の状態に合わせて運動量を調節しましょう。
体調が悪い時は休みましょう。
運動中は休憩を入れ呼吸を整えながら行います。
運動時の中止基準
運動中、以下の状態に一つでも当てはまる時は運動を中止して下さい。
その他の自覚症状:高度の息切れ、動悸、胸痛、高度の疲労、幻暈、ふらつき、チアノーゼ、多量の発汗等。
呼吸数:1分間に30回以上
心拍数:年齢別最大心拍数の85%に達したとき(年齢別最大心拍数:220-年齢)×0.85
例:年齢80歳の方であれば(220-80)×0.85=119回/分
血圧:高度に血圧が下降したり、上昇した時 ※血圧計をお持ちの方:運動前・中・後で測定して下さい。
パルスオキシメーターをお持ちの方:SPO2:90%以下の場合(運動前・中・後に測定して下さい。)
呼吸困難感:修正ボルグスケール7~9
※回数・時間等の運動量はあくまで目安なので、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
修正ボルグスケールとは?
人によって運動のきつさ・感じ方には違いがあります。 修正ボルグスケールは、運動した時のきつさを数字と簡単な言葉で表現し、標準化したものです。 0~10の数字で表し、0に近づくにつれて楽に感じ、10に近づくにつれてきついという解釈になります。
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落ち着いて深呼吸(口すぼめ呼吸)を行い、呼吸を整える事が必要です。
椅子がある時 椅子がない時
●椅子に座って前かがみの姿勢になります。(テーブル等がある場合はテーブルにもたれかかるようにします)
●落ち着いてゆっくり口すぼめ呼吸を行い、呼吸を整えます。
●頭の前で腕を組む姿勢をとり、壁などに寄り掛かります。
●落ち着いてゆっくりと口すぼめ呼吸を行い、呼吸を整えます。
※息切れなどの症状が軽減しない場合は、家族の方や、周りの方に伝え、病院へ連絡、または救急車を呼んで下さい。
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痰は、肺内の分泌物や吸い込んだ空気中の異物や細菌が気道の粘膜に付着したものです。
勢いよく痰を出す方法(ハフィング)
ハフィングとは、のど元に上がってきた痰を外へ出すための重要な方法です。 『ハッ!ハッ!』と声を出さずに勢いよく息を吐く方法です。ご自身で、息を吐く際に胸を圧迫することで、より強く息を吐く事ができます。
自己排痰法【ACBT(Active Cycle Breathing Technic)】
これは、呼吸のコントロール、胸郭を広げる動き、ハフィング、強制的に息を吐く事を組み合わせた方法で、痰が移動するまで数セット繰り返します。
①安静呼吸4~5回
②深呼吸2~3回
③ハフィング4~5回
④咳2~3回
※どちらもやり過ぎると疲れますので、休憩をはさんで行うようにしてください。